この場所は、誰のものでもない海ではない。
霧未妙子が個人で所有する、
外部の立ち入りが一切許されていない完全なプライベートビーチ。
地図にも載らない小さな無人島。
定期船もなく、観光客も来ない。
この日、この時間、
ここにいるのは二人だけ。
霧未妙子と、
記録を任されたカメラマン、月来弘。
周囲を見渡しても、人影はない。
砂浜にも、岩場にも、
そして海の中にも、遊んでいる人間は一人も存在しない。
ただ波の音だけが繰り返され、
風が身体の輪郭をなぞっていく。
視線はない。
遮るものもない。
だからこそ、
余計な緊張もなく、作られた仕草もない。
グレーレギンスは、
光と風の中で静かに密着し、
その瞬間ごとの形を、そのまま浮かび上がらせる。
それを、ただ記録する。
触れることもなく、
演出を加えることもなく、
目の前にあるものだけを切り取る。
ここは、誰にも知られていない場所。
誰にも見られていない時間。
完全に閉じられた空間の中で、
ただ存在する輪郭と、静かな気配。
霧未妙子のビーチで、
月来弘が記録した、
他に何も混ざらない、そのままの一冊。